カスタマーハラスメントは、顧客や取引先などから過剰な要求を受ける、不当な言いがかりをつけられるなど、悪質なクレームを指します。昨今では悪質なカスハラの実態が明らかになっており、従業員の保護が課題となっています。そうした中、厚生労働省は企業に対策を義務づける方針を決めました。厚生労働省は、2024年12月26日に開催した労働政策審議会の雇用環境・均等分科会にて、カスタマーハラスメント対策を企業に義務付ける案を示し、了承されました。厚生労働省では「カスハラ」の定義として、以下の3つの要素を全て満たすものとしています。(1)顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行うこと(2)社会通念上相当な範囲を超えた言動であること(3)労働者の就業環境が害されることこの定義を踏まえ、企業に対し、労働者からのカスハラ被害相談に適切に対応するための体制整備などを求める方針です。具体的には、以下の4つなどが挙げられています。けでなく、電話やインターネット上のカスハラ行為も禁止されます。さらに、企業間取引を背景としたカスハラ行為も規制の対象となるといいます。ただし、この条例には罰則規定はありません。しかし、行為の内容によっては、別の法律に基づく処罰等を受ける可能性があるとされています。の制定をめぐっては、企業側などから「カスハラに該当する行為の線引きが難しい」との懸念も上がっていました。そこで、都はカスハラと認められる具体的な行為などをまとめたガイドラインを2024年12月25日に公表し、線引きの明確化を図っています。(1)就業者への身体的な攻撃(2)就業者への精神的な攻撃(3)就業者への威圧的な言動(4)就業者への土下座の要求(5)就業者への執拗な(継続的な)言動ちなみに、東京都カスハラ防止条例例…物を投げる、唾を吐く例…人格を否定するような言動を行う例…声を荒げる、睨む例…長時間、必要以上に厳しい叱第705号 第705号 この広報紙の作成には共同募金配分金を活用させていただいていますこの広報紙の作成には共同募金配分金を活用させていただいています 責を繰り返すをする関し侮辱的な言動をする言動をする投稿するカスタマーハラスメント対策を企業に義務づけ①事業主の方針等の明確化及びその周②相談に応じ、適切に対応するために③カスタマーハラスメントに係る事後知・啓発必要な体制の整備の迅速かつ適切な対応(カスタマーハラスメントの発生を契機として、カスタマーハラスメントの端緒となった商品やサービス、接客の問題点等が把握された場合には、その問題点等そのものの改善を図ることも含む。)④これらの措置と併せて講ずべき措置なお、東京都では、2025年4月から、全国初となるカスハラ防止条例(以下、「東京都カスハラ防止条例」)が施行されます。この条例では「何人も、あらゆる場において、カスタマーハラスメントを行ってはならない」と規定されており、店舗・事業所の窓口などにおける行為だ(6)就業者を拘束する行動例…長時間の居座りや電話など(7)就業者への差別的な言動例…人種、職業、性的嗜好などに(8)就業者への性的な言動例…つきまとい行為、わいせつな(9)就業者個人への攻撃や嫌がらせ 例…顔や名札を撮影しSNSにここ最近、カスタマーハラスメントの相談を多く受けます。カスハラを放置すれば、従業員の心理的被害や職場環境の悪化を招く恐れがあります。場合によっては休職や退職にもつながるリスクがあり、企業にとって看過できない問題となります。加えて、使用者として安全配慮義務を怠った場合、損害賠償責任を問われる可能性もあります。また、従業員がカスハラに遭い、適切な対策がとられない場合、企業イメージの低下や顧客離れも懸念されます。このように、カスハラ対策は経営の根幹に関わる重要課題と言えます。特定社会保険労務士 泉谷 功いずみたにいさお施設通信11け い え い そ う だ ん し つけ い え い そ う だ ん し つ経営相談室だより
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