新しいブック
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~I Love You の手話で~みんなに愛をとどけたい左)辻さん 右)中村さん小学校高学年から高校までは普通学級に進学。それまで通っていた盲学校や難聴児学級と違い、周囲も自分の対応に困っていることを感じた。林間学校などの役割分担を決めるときも、複数の人が話していることを理解することができず、自分の意見を言うことができない。決まった役割を教えてもらい、それをやるだけ。自分は意思がない人間だと劣等感を抱えていたが、聞こえないからとあきらめていた。聴覚障がいの人が通うデザイン系の大学に進学し、はじめて手話を覚えた。手話を使うことで、会話が見え、自分の意見を伝えることができた。自分に意志があったことに驚き、大きな衝撃を受けた。大学卒業後は印刷会社の事務に就職。さまざまな仕事に就いたが、事務が中心で人と接することは少なかった。そんなとき、演劇に出会った。聞こえる人、聞こえない人も一緒に観劇する中で舞台に立った。その経験から、手話で何か仕事ができるかもと思いはじめ、小さい頃の「接客の仕事で働きたい」という夢を思い出し、ネットでさがした。感じられる文化を大切にしているスターバックスを見つける。「障がいという個性が輝く居場所」、 そんな言葉に強く心をひかれ、また、スターバックスが好きだったこともあり就職。提供とドリンクやフードの仕込みと準備。JR難波駅前店は3~4人のパートナー(スタッフ)で運営しており、中村さんはそのひとりとして働く。コーヒーのドリップ時間など、仕事のサイクルを8分、12分とタイマーで管理。このそこで、誰もが自分の居場所と現在、2年目になる。中村さんの担当は、ドリンクのタイマーは音ではなく、振動で時間を知らせる。 「耳が不自由です」というバッジをエプロンにつけ、ドリンク提供時はレシートを見せてもらうように掲示。「お水をください」などの指差しシートや筆談用具も準備し、働きやすい環境を整えている。コロナ禍で、マスク着用になったため、中村さんは口の動きで話を読み取ることができなくなった。 そんな状況でも、周りのパートナーがサポートし、業務に必要な単語を手話や身振りで知らせてくれるため、日々の業務の中で不安を感じることはないそうだ。聞こえないことを理由に、お客様から叱られたこともない。中村さんと一緒に働く辻さんは、はじめは戸惑いもあったが、お客様に笑顔を届けたいという共通の目標のため、働きやすい環境を作り、少しでも不安があるなら解消したいと考えている。 「ひとみさんに会いに来てくれる、手話で話しかけてくれるお客様を見ると、ひとみさんがきらきらと働いていることの影響力の大きさを感じている」と語る辻さん。辻さんも手話の本を買い、勉強中。できれば、もっと手話で会話できたらと夢を語る。今後は、東京にあるサイニングストアでも働いてみたいと語る中村さん。演劇の世界では映画に出たいという夢も教えてくれた。夢をかなえるために必要なことは、できないこと、分からないことをきちんと伝えること。そして、ひとりで解決できないことも、誰かに相談すれば、必ず道が開け、助けてくれる。誰もが輝くことができる。意思のない人間手話で会話が見えた好きなことに挑戦サポートに安心感笑顔を届けたいさらなる夢にむかって📎サイニングストア 手話を使用し、聴覚障がいのあるパートナーと聴者が共に運営。 東京にある「スターバックス コーヒー nonowa国立店」はスターバックス国内初のサイニングストアとして2020年6月にオープン。※スターバックス コーヒー JR難波駅前店 住所:大阪市浪速区湊町1-2-3マルイト難波ビルB1階           5📎   お店のスタッフの耳が聞こえないかもしれないと想像したことはあるだろうか。 スターバックス コーヒー JR難波駅前店(※)で働く中村ひとみさんは生まれつき耳が聞こえない。幼いころから、聞こえないことを理由に周囲に反対され、一時はあきらめていた接客の夢をかなえて働く中村さんと、一緒に働くアシスタントストアマネージャーの辻由奈さんに話を聞いた。~夢をかなえる~Dreams come true耳が聞こえなくても接客

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