「面会制限」という壁市民後見人の強み支援の手をつなぐ一冊のノート歩みを止めないために 6「Aさんと面会することができない中で、私に何ができるのか。それはもう悩みましたよ」そう語るのは、市民後見人として平成27年から地元河内長野市で活動を続けてこられた田中繁さん。知的障がいがある被後見人のAさんは、施設に入所されており、田中さんはこれまで週1回のペースで訪問し、面会していました。しかし3月、コロナの拡大により、Aさんとの施設での面会が制限されてしまいました。6月には一時解除されたものの、8月には再び面会制限となりました。「他のボランティア活動はすべて自粛になっているが、後見活動は止めることができない。他の後見人はどうしているんだろう。私はお役に立てているのだろうか。そんなことをずっと考えていました」Aさんと向き合えず、いら立ちと孤立感の中、田中さんは、「なぜ市民が後見活動をするのか。その原点に立ち返った」といいます。弁護士や社会福祉士、司法書士のような専門職ではない「市民後見人」の最大の強みは、同じ市民だからできる寄り添い型の支援です。田中さんはAさんの財産管理だけでなく、心身の状態や生活の状況に配慮して、ご本人の生活、健康、療養等に関して必要な支援を行います(これを身上監護といいます)。また、これら一連の後見活動は無報酬で行われます。まさに「市民と市民のかかわり」こそが市民後見人であるゆえんといえます。そこで田中さんは「私が面会できなくてもAさんは一人ではない。施設職員と協力しながら身上監護を続けよう」と考えました。況確認や健康管理のため、施設に記録ノートの作成を依頼していました。「このノートがAさんと私を繋いでくれた」と語る田中さん。施設職員にノートの写しを定期的に郵送してもらい、その記録を見ながら施設に電話し、Aさんの状況を聞き取ることにしました。や記録のことを説明しなければならなかったけど」と苦笑いの田中さん。「職員の皆さんのご理解とご協力のおかげで、Aさんとつながり続けることができたと思っています。本当に感謝しています」ち後見人には、ご本人とともに歩み続ける使命があります。寄り添い方は人それぞれだが、どんな形でも被後見人と繋がり続け、情報を得る体制を整えることが必要だと思います」と田中さんは力強く語ります。かねてから、田中さんはAさんの状「施設の担当者が代わるたびにノート「どんな困難が降りかかっても、私た「8月、再度の面会制限の時でしたまた、こんなエピソードも。が、施設訪問した時、15メートルくらい離れた場所で一度Aさんを見ることができました。私が手を振ると大きく振り返してくれて。うれしかったですね。ああ、分かってくれたんだって。本当に後見人をやっててよかったです」と笑顔に。一方で、「私はAさんに顔を覚えてもらっているから、面会制限が解除されればお互い再会を喜びあえます。しかし、認知症の方を支援している後見人の中には、コロナで面会できない間にすっかり顔を忘れられてしまった方もいらっしゃる。それはとても辛いことでしょう。でも私は、これまで後見人として関わり続けた時間はきっと裏切らないと信じています。コロナに負けず、くじけず、歩みを止めないことです。これからも後見活動をずっと続けていきます」と意気込みを語りました。 成年後見制度…認知症や知的障がい、精神障がいにより判断能力が十分でないため自分自身で契約や財産管理などの法律行為を行うことが難しい場合に、家庭裁判所から選任された成年後見人等がその援助をする制度です。成年後見人はご本人の意思を尊重しながら生活状況や心身の状況等も考慮し、ご本人に代わって福祉サービスの利用契約や財産管理を行うことで、生活や財産を守ります。新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)拡大の影響により、社会福祉施設等では利用者との面会制限を余儀なくされました。この面会制限は、利用者の親族はもちろんのこと、成年後見制度()における後見人も同じです。同じ市民の立場で、判断能力が十分でない方に寄り添い後見活動を行う「市民後見人」。彼らは、このコロナ禍による面会制限をどう受け止めたのか。市民後見人と、その活動をサポートする専門職の方にお話を伺いました。河内長野市在住。平成24年度市民後見人養成河内長野市在住。平成24年度市民後見人養成講座を受講し、翌年度バンク登録。平成27年3月講座を受講し、翌年度バンク登録。平成27年3月に受任し、令和2年には5年以上市民後見活動に受任し、令和2年には5年以上市民後見活動に尽力された方に贈られる「市民後見人功労表に尽力された方に贈られる「市民後見人功労表彰」を受章。彰」を受章。被被後後見見人人をを援援助助すするる市市民民後後見見人人ととししててーー 河河内内長長野野市市市市民民後後見見人人田田中中繁繁ささんん
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