ふくしおおさか2022年4月号
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スキーマは「クッション材」常にスキーマを“新鮮”に―アフターコロナを見すえて―スキーマで能力の〝すき間〟を埋めようスキーマが招く“間違い” 「スキーマ(schema)」という言葉をご存知ですか?たとえば、街中で体格のいい人を見かけたら「この人はスポーツをしているかも」、たこ焼きが好きな人がいたら「この人は大阪生まれかも」と考えることがあります。私たちは日常的にこのような推測を行っています。このときに用いているのが「スキーマ」という推測能力です。スキーマは私たちにとって非常に重要で有意義な能力ですが、判断や行動を間違える原因になることもあります。本稿ではこれらについて考えるとともに、アフターコロナの環境激変時代に求められる「新たなスキーマ」の必要性についてもお話しします。スキーマは「ある事柄を理解しようと試みるとき、自身の知識や経験の枠組みをもとに推測する能力」と定義されています。ようするに「未知の問題と、すでに保有している能力(以下「保有能力」とします)との間にある“すき間”を埋めるクッション材」のようなものだと考えればよいでしょう。私たちはスキーマを、過去の知識や経験、そこから得た法則性をもとに形成・習得しています。ですから、幼いころからの経験や学生時代に学んだ多様な知識はいうまでもなく、社会人としての経験やそこで得た知識もまた、スキーマの形成や習得に重要な役割を果たしています。仕事で出会う未知の問題の中には、高い専門性が求められるものも少なくありません。そうなると保有能力との間にできる“すき間”は、より広く、深くなります。このとき、もし自身が習得しているスキーマが高度なレベルであれば、そのすき間を素早く的確に埋めることができ、解の推測もしやすくなります。「すき間を埋める能力がスキーマ」。これは単なる語呂合わせではなく、意外にわかりやすい比喩ではないでしょうか。点もあります。それは、「そのスキーマがいつまでも通用するとは限らない」ことに気づかない点、そして自信が「過信」になってしまう点です。き、保有能力にスキーマを加えて仮説をたてて、情報を整理し、意思決定を試みます。このときに起こりがちなのが、自分のスキーマに合った情報だけを都合よく取り込んで推測してしまうという間違いです。一種の先入観・固定観念だと考えてよいでしょう。取り組むべきは、さまざまな情報を集めて慎重に分析・推測することです。自身のスキーマを過信してしまうと、間違った意思決定につながります。ずしも的を射ているとは限らないことを理解しておく必要があります。一方、スキーマが原因で生まれる弱私たちは疑問や問題に直面したと本来、疑問や問題に直面したときにしかし、調べるのを面倒くさがったり普段から、今もっているスキーマが必私は、私たちが今もっているスキーマのすべてを否定しているわけではありません。これから先にも長く通用するスキーマはたくさんあるはずです。しかし一方で、今もっているスキーマがすでに「賞味期限切れ」となっている可能性も拭い去れません。特に昨今はコロナ禍で世の中が激変しはじめている時代ですから、賞味期限までのサイクルも短くなっているはずです。短絡的に既存のスキーマだけを用いて意思決定すると、誤った判断を生み出しかねません。社会人になってからも新たな知識を積極的に学ぼうとする人は、決して多くありません。この機会にいま一度、スキーマの更新、さらには新たなスキーマの開発を意識してみてはいかがでしょう。やり方はシンプルです。前述のとおり、さまざまな情報を集めて慎重に分析・推測すればいいのです。ニューノーマル(新たな常態)が求められるこれからのアフターコロナ時代、スキーマで自分がもっている能力の“すき間”を埋め、保有能力の更新・開発をする努力が、これまで以上に必要になるでしょう。人材マネジメント研究所 Compass 鈴すず記き 裕ひろ幸ゆき11経営相談室だより

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